消費税のはなし 前編(課税と納税義務)

      2019/09/20

フロントオフィスのシュウトウです。

いよいよ消費税率の引上げが迫ってきましたね。
その妥当性や意義には大いに疑問を持っていますが、ひとまずそれは置いておいて、不動産売買における消費税の考え方について少しまとめてみようという企画です。
ちょっとややこしいので2回に分けて、前編では消費税の課税と納税義務のきまりについて解説します。

消費税は「消費税法」という法律によりその課税対象が規定されています。

第四条 国内において事業者が行つた資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。第三項において同じ。)及び特定仕入れ(事業として他の者から受けた特定資産の譲渡等をいう。以下この章において同じ。)には、この法律により、消費税を課する。

この規定によれば、課税される条件としては、

1 「国内」における資産の譲渡等であること
2 「事業者」が行った資産の譲渡等であること

となっています。

同法二条には用語の定義がありますので、関連する箇所を抜粋しておきます。

 第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 国内 この法律の施行地をいう。
三 個人事業者 事業を行う個人をいう。
四 事業者 個人事業者及び法人をいう。
八 資産の譲渡等 事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう。
八の二 特定資産の譲渡等 事業者向け電気通信利用役務の提供及び特定役務の提供をいう。

そして、納税義務者の規定として、

第五条 事業者は、国内において行つた課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。第三十条第二項及び第三十二条を除き、以下同じ。)及び特定課税仕入れ(課税仕入れのうち特定仕入れに該当するものをいう。以下同じ。)につき、この法律により、消費税を納める義務がある。

とありますので、以上をかみ砕くと、

「日本国内で、個人・法人かかわらず、事業として対価を得て資産を譲渡又は貸付けもしくは役務を提供したときには、消費税を課税するので、対価を得た人は納税しなさい」

というのが法に定められた原則です。

ところで、

第九条 事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

という、小規模事業者は納税義務が免除されるという規定があることは、みなさんご存じなんじゃないかと思います。
つまり原則に基づいて課税はされるけれども「基準期間における課税売上高」が1000万円を超えない事業者(個人・法人)なら納税はしなくても良いということになっています。
そうすると、次に「基準期間」とは何かというのが問題ですが、

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
十四 基準期間 個人事業者についてはその年の前々年をいい、法人についてはその事業年度の前々事業年度(当該前々事業年度が一年未満である法人については、その事業年度開始の日の二年前の日の前日から同日以後一年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間)をいう。

と決められていて、要は取引する年(課税期間)から見た「前の前の年」のこと。
ですので、

「前の前の年の課税対象になる売上高が1000万円を超えていない事業者については、その年に国内で事業として対価を得て資産を譲渡して消費税が課税されたとしても、納税する義務はない」

という意味になります。

さらに、

第六条 国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには、消費税を課さない。

という非課税になる特別枠の規定もあり、引用されている別表第一の先頭には、

別表第一
一 土地(土地の上に存する権利を含む。)の譲渡及び貸付け(一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)

と定められていますので、こと土地の譲渡と貸付けについては、そもそも消費税が課税される対象になっていないのです。

さぁここまでの話を踏まえて、不動産を売買した場合の消費税を考えると、要旨次のとおりになります。

<※ここが大事!>
「日本国内で、個人・法人かかわらず、事業として対価を得て建物を譲渡したときには、消費税を課税するので、対価を得た人は納税しなさい。ただし、その対価を得た人の前の前の年の事業売上が1000万円を超えていない場合は、納税しなくて良いことにします」

課税となるポイントをまとめます。

① 国内の取引であること
② 個人でも、法人でも
③ 事業上の売却であること
④ 建物であること

さらに納税義務についてまとめます。

⑤ 納税するのは売主
⑥ 取引する年の前の前の年に1000万円を超える事業売上がある場合 

以上①~⑥のすべてを満たすと、その不動産の売買に関して消費税を納めなければならないのです。

納税義務の免除などにはさらに考慮しなければならない要件もあったりします(特定期間による算定など)が、基本的な説明としては以上のとおりです。

いかがでしたか?
ややこしいですよね。

本論から逸れますが、消費税に限らず税法というのは分かりにくい制度になっていることが多いです。
納めるべき税金を納めないと追徴されますし、納めなくてよい税金を誤って納めても自動的には戻ってきません。
それだけに事業として税金を考える場合、良い税理士さんに相談することは本当に大事です。

次回の後編では、消費税と重要事項説明についてお話します。

 - 1F 第1営業部