消費税のはなし 後編(重要事項説明等における消費税)
2019/10/09
引き続きシュウトウです。
前回は消費税の課税・納税のしくみについて、不動産売買の視点から概略をお話しました。
後編では、一連の不動産の売買手続、特に重要事項説明のなかでどう消費税が取り扱われるか、というやや専門的な話題に視座を据えたいと思います。
まず、土地・建物の売買では、売買金額は総額だけでなく、土地と建物の内訳(按分額)を特定して取引するのが原則です。
目的や規模などによりすべての売買が該当するわけではありませんが、基本的に、不動産に関連する税制(消費税、譲渡所得税など)において必要となる可能性の高い事項だからです。
これは重要なため当然重要事項説明書に記載し、売買契約締結前に説明する必要のある事項だと言えます。
そして、建物価格のなかに消費税が含まれるか否かは、前回ご説明したとおり課税される要件にあてはまるかどうかで決まりますが、宅建業を管轄する国土交通省では、宅建業者に向けてとりまとめた「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」のなかで、次のとおり指導しています。
その他の留意すべき事項
2 消費税等相当額の扱いについて
法第32条、第38条、第39条、第41条及び第41条の2等の規定の適用に当たっては、売買、賃借等につき課されるべき消費税等相当額については、「代金、借賃等の対価の額」の一部に含まれるものとして取り扱うものとする。(中略)
また、法第37条第1項第3号又は第2項第2号の規定により、宅地建物取引業者は、契約を締結したときは、遅滞なく、「代金の額」又は「借賃の額」を記載した書面を交付しなければならないこととされているが、消費税等相当額は、代金、借賃等の額の一部となるものであり、かつ、代金、借賃に係る重要な事項に該当するので、「代金の額」又は「借賃の額」の記載に当たっては、「当該売買、貸借等につき課されるべき消費税等相当額」を明記することとなる。(中略)同様に、法第34条の2第1項第6号又は法第34条の3の規定により、媒介又は代理契約を締結したときは、遅滞なく「報酬に関する事項」を記載した書面を交付しなければならないこととされているが、その記載に当たっては、当該報酬の額に含まれる消費税等相当額に関する事項についても記載することとなる。
なお、譲渡、賃貸等に課されるべき消費税等相当額は、法第47条第1号の重要な事項に該当することとなるので、宅地若しくは建物の売買、交換又は貸借の各当事者に対して故意に事実を告げず、又は不実のことを告げた場合には、法第47条違反となる。(後略)
分かりやすく言うと「消費税は重要事項」だと明言しているわけです。
その理由ですが、代金に消費税がいくら含まれているかということが重要なのは当然として、
<※ここが大事!>
宅建業者が報酬としてもらう仲介手数料の上限額は、売買価格に消費税が含まれているときは、総額から消費税相当額を差し引いた額(本体価格)に対して計算されなければならず、それもまた当事者にとっては重要なことだからなのです。
以上のことから、宅建士は重要事項説明において、
① 土地・建物の按分額を説明する
② 消費税が課税される場合は、その額も説明する
という義務がありますし、さらに宅建業者としては、
③ 契約締結時、宅建業法第37条に定める遅滞なく交付すべき書面(通常は「売買契約書」)にも、土地・建物の按分額と消費税を記載しなければならない
ということになります。
では、これまでの話の総括として、賃貸マンションの売買について、具体的なチェックポイントを確認してみます。
1 課税されるか?
賃貸は事業ですので、国内の物件の売買であれば100パーセント課税対象になります。
当事者が個人か法人かは関係ありません。
買主は支払う売買代金に消費税が含まれていることを前提に帳簿を作成することになります。
2 納税義務はあるか?
納税すべきは売主ですが、原則、売買の前の前の年に1000万円を超える課税売上があったときは、売買で課税された消費税を納税する必要があります。
なお、住宅の貸付けは非課税のため、賃貸マンションの賃料収入は非課税となり、売上が1000万円を超えていても問題ありませんが、そのマンションを売却したときの売上は課税対象になります。
そのため、平時には課税売上のない個人事業主だったとしても、前の前の年に別の物件を1000万円を超える額で売却するなどしている場合は、その年の売買で課税された消費税を納税する義務が発生しますので、注意が必要です。
3 重要事項説明書は?
土地・建物の按分額のほか消費税額の記載とその説明がなされます。
売買契約書にも同様に記載されます。
4 仲介手数料は?
仲介手数料(媒介報酬)について、宅建業法で定める上限額で媒介契約を締結したときは、売買総額から消費税相当額を差し引いた本体価格を基準に計算されます。
総額に対して計算されるわけではありませんので、ご注意ください。
なお、媒介契約書にも適正な報酬計算ができるよう売買総額のほか消費税額が記載されることになります。
いかがでしたか?
税制というのは本当に難しいですよね。
不動産と税金は切っても切れませんので、これはやむを得ないことですが、消費税のみならず、所得税、登録免許税、不動産取得税、印紙税、住民税、社会保険料などとも関連し、各種特例、改正も頻繁にあるので、もうついていくのもやっとです。
ちなみに、税金について具体的な計算は税理士又は公認会計士の専権事項ですので宅建業者は行いませんが、それでも税制のあらましを知っておいて、必要に応じてご説明すべき機会というのはあるので、やっぱり勉強は必須ですね。
蛇足ですが、税制は中学・高校の必修教科にすべき、と思います。笑