八重樫の「眼」⑨~『撤回』の法的効果~
2021/02/25
こんにちは!八重樫です。
実に約3年ぶりの続編となりました、八重樫の「眼」。
始めて本シリーズをご覧になる方に説明すると、
「日常の様々な出来事に対して、八重樫が独自の目線で論説する」というコーナーです。確か。
今回は最近情報番組でよく見る、あの方のあの発言に関する一連のあれについてです。
冒頭述べたように、当コラムは「独自の目線」がウリですので、発言内容の是非には触れません。
今日は、「果たして失言は撤回できるのか?」ということを法的視点から考えてみたいと思います。
まず、「撤回」の一般的な意味は・・・
「いったん提出・公示したものなどを取り下げること」
「一度出したものを取り下げること。言い出した事柄を後になって引っ込めること」
などとなっています。
今回の失言の撤回などのような場合は、後者後段の「言い出した事柄を後になって引っ込めること」に当てはまるのでしょうか。
しかし、法律用語としての「撤回」は次のような意味になっています。
「意思表示をなした者が、その意思表示の効果を将来に向かって消滅させること」
代表的なものは、「買うと言ったけどやっぱり買うのをやめる(申込みの撤回)」や
「解約の申し入れをしたけどやっぱり解約しない(解除の撤回)」などがあります。
そうすると、失言の内容として、それが将来何らかの効果が生じることをうっかり言ってしまった場合は撤回できそうです。
しかし、内容が発言者の意見や思想・信条だった場合、それは将来的に効果を発生させる類のものではないため、撤回は不可能だと解されます。
だって、撤回したところで「あの人はあんなことを考えているんだ。がっかり!」という聞き手の印象は消滅させられないですからねえ・・・。
そのような場合は、「以後考えを改めるよう努力します」が弁明としては適切なのかなと思います。
覆水盆に返らず。
撤回のできないことがあるというのを肝に銘じなければいけませんね。