媒介報酬規制が一部変更になりました。

      2024/08/01

宅建マイスターの周東です。

令和6年7月1日から、宅地・建物の売買等における媒介報酬(=仲介手数料)の規制が一部変更になりました。
今回はまじめにそのお話をしたいと思います。

ご存じのとおり、宅地(=建物を建てることのできる土地)や建物の取引(=売買・交換、賃貸)の代理や媒介(=仲介)は、国土交通大臣又は都道府県知事から免許を受けないと業として行うことはできず、免許を受けた業者を宅地建物取引業者(宅建業者)といいます。
これは宅地建物取引業法(宅建業法)という法律によって定められています。
そして、宅建業者が宅地・建物の売買等の仲介を行うことで受ける報酬の額については、宅建業法第46条で国土交通大臣がその上限を定め(同法第1項)、これを超えてはいけない(同法第2項)と定められています。

その国交省が告示している、売買・交換の媒介報酬額の上限がこちら。

分かりにくいので、横書きにすると以下のとおり。

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・成約価格200万円以下 … 5.5%(消費税込)
・成約価格200万円超/400万円以下 … 4.4%(消費税込)
・成約価格400万円超 … 3.3%(消費税込)

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よく「成約価格×3%+60,000円」といわれるのは、400万円を超える宅地・建物の場合、400万円以下の率の異なる部分だけを計算すると60,000円になるからです。
400万円以下の物件のときは、成約価格により「5.5%」になったり、「4.4%+20,000円」になったりします。

そこで生じるのが、安い宅地・建物の売買では手数料が安くて業者が仲介したがらない、という問題。

例えば100万円の宅地の売買の場合、宅建業者が売主または買主から受けられる媒介報酬は、税込55,000円ということになります。
媒介報酬には媒介にかかる通常の経費を含むとされているので、売買仲介のために現地に赴いたり、官公署で調査を行ったり、必要な書類を取得したりする移動交通費や書類取得費用を別途もらうこともできません。
これでは利益にならないどころか、その業務に割く人件費を考慮すればおそらく経費倒れです。

ところが、400万円以下のいわゆる低廉な不動産というのは地方を中心に相当な数があり、その多くが未使用地や空家だったりと流通しにくい状況にあって、経済や地域環境への悪影響は近年社会問題にもなっています。
そして、宅建業者の報酬上限が低いこともその一因とされてきました。

この問題を受けて、平成30年(2018年)1月には、400万円以下の宅地・建物の売却における媒介報酬については、上限を198,000円(180,000円+消費税)とする見直しがされました。
個人的な見解ですが、この見直しは低廉な宅地・建物の流通の促進に一程度の効果があったと思いますし、当社としても積極的に取りつかうことができる要素になりました。

ただし、この特例は「購入の媒介報酬」は規定外なので、買主の仲介業者は従前どおりの報酬しか受けることができませんでした。
そして空家等の流通促進は喫緊の課題であるとの社会的要請から国交省でも更なる見直しが検討され、今年6月、平成30年の改定を更新するかたちでさらに報酬上限の緩和が図られる告示が発せられ、7月1日に施行されました。
その規定が次のとおり。

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【宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額】(抜粋)

第七 低廉な空家等の売買又は交換の媒介における特例
低廉な空家等(売買に係る代金の額(当該売買に係る消費税等相当額を含まないものとする。)又は交換に係る宅地若しくは建物の価額(当該交換に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該交換に係る宅地又は建物の価額に差があるときは、これらの価額のうちいずれか多い価額とする。)が八百万円以下の金額の宅地又は建物をいう。以下同じ。)の売買又は交換の媒介に関して依頼者から受ける報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)については、宅地建物取引業者は、第二の規定にかかわらず、当該媒介に要する費用を勘案して、第二の計算方法により算出した金額を超えて報酬を受けることができる。この場合において、当該依頼者から受ける報酬の額は三十万円の一・一倍に相当する金額を超えてはならない。

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要するに「成約価格800万円以下の宅地・建物の売買の媒介報酬については、330,000円(消費税込)を上限とする」ということです。

なお「低廉な空家等」という文言について補足すると、条文に明記されているように土地(宅地)も含みますし、さらに国交省は「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」という通達のなかで「使用の状態は不問」という見解を示していますので、空家だけでなく実際に居住等使用している建物についても該当します

また、この改正では売主か買主かの区別をしていないため、いずれの仲介業者も一律330,000円まで許容されるようになりました。
ただしあくまでも「上限」ですので、状況に応じて取り決める必要があります。

この改正が単に宅建業者の利益になるだけでなく、未利用地やストック住宅の流通促進という社会問題を解決する要素となると良いですね。

当社ではグループ法人である『行政書士法人エニシア』を核として相続問題にも積極的に取り組んでいます。
相続の場面ではいわゆる「負動産(ふどうさん)」の処理が問題になることが多く、たいていの場合そういった不動産は「低廉な空家等」に該当します。
トラブルを防止するためには、相続になってから(所有者が死亡してから)ではなく、元気なうちに、相続を受ける人たちのために、「負動産」になりそうな不動産の処分や利活用の検討をしておくことがとても大事ですよ。

「低廉な空家等」の売却などのお手伝いも積極的に行っていますし、状況により売却だけでなく賃貸や再活用など幅広く柔軟なご提案をしていますので、整理が必要な不動産があれば、いつでもお気軽にご相談ください。

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